El tiempo es oro 時は金なり
光陰矢のごとし、とはよく言ったもので、特に毎日が充実していると4か月は一瞬で過ぎてしまった。涙が出るほど貴重でかけがえのない時間だった。
直感に従って、ワーホリビザを取得し、家だけを決め、理由もなしに、行ってみることにしたマドリード。
理由はないけど、目的やテーマはあって、スペイン語を使えるまで習得することと、志しているスポーツ×公共の分野での人脈や経験を広げること。
家が裕福なの?金あっていいね、って言われるけど、そういうわけではなく、社会人生活で派手な遊びもまあ我慢し、ブランド品も買ったこともないし、服や化粧品も安いもの。電車賃がかかるなら、一駅歩く。染みついたケチ精神で、やりたいことや経験の為に投資しようとしていたお金。
もちろん、日本で送り出してくれた家族をはじめとする大切な人達、応援してくれた人達がいたからこそである。
スペインに行く前に交渉していた仕事は、なかなか返事も返ってこなくて、結局破談になる。
普通の語学学校に行くお金もなければ、スペイン語で仕事ができるほどのスキルもない。
おまけにパソコンの充電器は壊れ、日本で治療が終わったはずの歯が痛すぎて耐えられなかった。
しかし、逆境の中でも、マドリードの空気感は、良くも悪くも自分が今の等身大、ありのままいることを教えてくれた。太陽の、暖かくて少し激しい感じが、気持ちを前向きにさせてくれた。(今年は地元民も認める異常気象で寒すぎたけど)
そうしたら、良い機会や良い人達に巡り合うことができた。
NGOの活動では、スラム街でのスポーツクラブ作りやイベント、EUが助成するプロジェクトへの参加、Torrelodnes自治体と協力したスポーツコースの実施、ヘタフェでの会議、ザンビアガール達とのドノスティア遠征。
その土地に赴き、一緒に仕事をした人たちが、この上ないほど受け入れてくれて、学ぶことが多かった。
最初は生活費を稼ぐために始めた日本食レストランどん底の仲間は、あり得ないほど良い人ばかりで、こんな人に出会えるなんて思ってもみなかった。毎日100人くらいのお客さんと自分の国の料理を通してコミュニケーションを取り、食べることを通して生活を知る。楽しい仕事と大好きな同僚と、週末の仕事はいつも楽しかった。
スペイン語のプライベートレッスンをしてもらったり、日本語を教えたり、スペインらしいイベントに出かけたり。
良くしてくださった日本人の方々からも、海外生活のことからサッカーから恋愛ネタまで、いろんなことを共有させていただき、心強かった。
そして、お家でお世話になった家族。沢山の愛情をもらい、人生をどう豊かにしていくかを教えてもらった。
ある日、家のお母さんであるマルタが、去年の日本旅行に来た時に買ったという「ムヒカ大統領日めくりカレンダー」を持ってきて、「これ、日本語ばかりだから訳してくれない?」と言った。マルタの出身、ウルグアイの”世界一貧しい"大統領の言葉。政治家にも興味があるので、積極的に引き受けた。空いている時間にコツコツと翻訳をし、最後の週に、「できたから、スペイン語間違っていたら教えて」と渡してあった。
すると、最後の夜、手紙やプレゼントと共に、置いてあった。
私の翻訳を元に正しく修正されたスペイン語の全ての文章がタイピングされた紙もあった。
「この、”かわいいおじさん”は、私が持っているよりあなたが持っている方がよいでしょう。でも私が半分持っておくね」
カレンダーは真ん中のページでちぎってあった。
涙が止まらなくてベットで夜中まで泣いていた。
ムヒカ大統領、というかこのカレンダーが私をここに呼んでくれて、大好きな大好きな家族に巡り合うことができたんだなと、思った。
人生は、出会うべき人に出会うようにできている。
お別れが悲しいなら、いっそ出会わなければよかった、と思うほどの出会いである。
感謝してもしきれない。
幸せに生きることで恩返しをしようと、ただ思うだけの自分が、もう幸せすぎている。
与えてもらった人生を、思いっきり面白そうな方向に飛び出してみたら、後悔は全くない。
El tiempo es oro.
時は金なり、と直訳できることわざが、スペイン語にもある。
ただ、oroとは「金(きん)」のことで、おカネではなく、物質としての金のこと。
他方、英語では、Time is money.
money とoro は対応していないことに気づく。(スペイン語でお金はdinero)
時間は、マネーに変えられるギラギラしたものではなくて、自然の中に輝きを放っているような、きらきらとした、貴い贈り物のようなもの。
そこに、スペイン生活から教えてもらったことが詰まっている気がした。
そう考えると、日本語はどっちにもとれるグレーゾーンをいっているんですね。いつも通り。
Muchas gracias. Encantada conocerte. Hasta pronto, Madrid.