白と赤のマドリード人たち
2017年に、書いたやつ
サッカー王国スペインの首都、マドリードにいるので、当然、この街の二大クラブ、レアル・マドリードとアトレティコ・マドリードの試合を観に行った。
私の短い滞在の間に、CL準決勝が偶然にもダービーになった!!!(レアルvsアトレティコ)そんな興奮で、私の手が勝手に高いチケットを買っていました。。
CLの決勝は中立地の一発勝負で行われるので、また雰囲気は別物。それ故、ホーム&アウェーで行わる準決勝の試合は、質と“ホームスタジアム”ならではの盛り上がりが、世界中あらゆる試合の中でも価値のあるものだと確信していた。
レアルのホームスタジアム、サンティアゴ・ベルナベウは、多分いつもの週末の通り、何万人もの人に囲まれた。オフィス街の一角に構えるスタジアムの前には多くのテレビ中継車が並び、人々はその隙間を埋め尽くす。強靭な柵に区切られたエリアに赤いサポーター(アトレティコ)が丁重に保護され、警備隊の目をよそに、外の白いサポーター(レアル)を挑発する。煙が上がり、人々は歌い、その90分の為にスタジアムに集まっていく。
何メートルも下のピッチを走る米粒の選手たちが洗練されたサッカーを繰り広げる。ファンも選手と同じように一つ一つのプレーに集中し、唸り、一秒たりとも目を離さない。
結局、クリスティアーノ・ロナウドのハットトリックによって、勝利した。
レアル・マドリードここにあり。我々が正統だと言わんばかりに、王族を意味する“レアル”を見せつけるような一戦だった。
スタジアムはまるで劇場のよう!なんて言葉では稚拙に聞こえる。私にとっては涙が出るくらい至福の90分だった。
数日後に訪れたビセンテ・カルデロンは大衆の臭いがした。CLの2nd レグは値段が高すぎるので、普通のスペインリーグの終盤の一試合に行った。
晴れ渡った青空ともくもくの雲のせいもあってか、NYヤンキースの試合を思い出した。
アメリカのMLBのような、エンターテイメント臭というか、なんだかファンが試合に集中していない。アウトドアで開放的で、人間の、野蛮な、洗練なんて知らない、でも温かい、お祭りのような雰囲気が漂っていた。
ここにも同じようにチームを愛する人がいて、魂があった。
人々はヒマワリの種をむしゃくしゃと食べながら椅子の下を汚し、明るく笑い歌い叫ぶ。
この雰囲気はとっても居心地が良く、愛らしい。スタジアムを去るのが寂しい気がした。
“¿De que equipo eres?”(どこのチームを応援しているの?)隣に座っていた少年が聞いてきた。
“Atlettiii!!”(アトレティコだよ!)と嘘をついた。
スペイン語では、「¿De donde eres? (どこの出身ですか?)」とおなじ文法で、好きなチームを聞く。
生活にサッカーがあることが言葉にも現れている。
相手は乾選手のいるエイバル。生きるか死ぬかのリーグで、日本人選手が普通に走っているのを見て、なんだか不思議な感覚だった。近そうで遠い、簡単そうで難しいのかなと。
同じ街に、大きなサッカークラブがあって、同じようにサッカーのある週末を迎える。
なんでそのチームが好きなの?というのは愚問である。
その血が流れているから、なんだと思う。